どんな「副業」をしたらいいか分からない人へ! 本音のアドバイス【角田陽一郎×加藤昌治】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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どんな「副業」をしたらいいか分からない人へ! 本音のアドバイス【角田陽一郎×加藤昌治】

『仕事人生あんちょこ辞典——50歳の誤算で見えた「ブレイクスルーの裏技45」』とは

◉役に立つかと関係なく、まずはアーカイブから

 

角田:テーマでいうと、何が副業に繋がるか分からない、って話なんだけどさ。

加藤:お、話振ってきましたよ。

角田:「やらなくていいこともやらなくちゃいけない」っていう話なんだけど、『日曜美術館』を僕の知り合いが「面白い」ってTwitter でつぶやいてたのをたまたま見たんだけどさ、法隆寺の金堂壁画ってあるじゃない? あれって昭和24年に焼けちゃってるんだよね。

加藤:焼けてるね。

角田:それから20年経った昭和40年代に修復事業があって、今の壁画って当時の日本画の大家の人たちが修復したものなんだけど、なんでそんな修復ができたかっていうと、昭和10年代に、模写してた無名のお坊さんみたいな方がいるんだって。その方が徹底的に模写していたものが残っていて、それがあるから修復できたっていうことがひとつあるわけ。

加藤:へー。

角田:その人は本当に無名の人で、芸術家として全然大成してないんだけど、金堂壁画の素晴らしさに魅入られてずっと描いてたんだって。それは「なるほど」と思って観てたんだけど、もうひとつすごいなと思ったのは、昭和10年代に当時の文部省が、「国宝を保存しておこう」ということで写真に撮ることが事業として行われたんだけど、その時担当した技師がどうやったらクオリティを残して撮れるかを考えて、42枚に分割して全部ピントを合わせて撮ったらしいのね。

 それ自体もすごいなと思うんだけど、当時はカラー技術なんかないのに、その人は「色も残しておいたほうがいい」と思ったらしく、赤・青・黄のフィルターをかけて、その濃淡をデータとして残しておけば「いつかカラー再現ができるんじゃないか」ってことで、黒を含めて4色の写真乾板を残しておいたんだって。

加藤:ほお。

角田:当然その人もカラー技術なんていつできるか分かっていないんだけど、何十年か経って戦後の修復作業をする時になったら、カラーで残っていたからそのデータで再現できたんだって。

 僕、その話が本当にすごいなと思うのはさ、つまりその「無駄なこと」っていうか、今それをやろうって言ったら「そんなの予算がない」とか「そんなこと無駄だよ」とか「よく分からないからやるなよ」とか言われて、やめちゃうじゃん。ところがやっておくと、結果的にそれが20年後に価値のあるものになっているってことがあるんだよね。「無駄だからやめろ」とか「決まりだからやめろ」って言われるようなことって、むしろやる人がいないとイノベーションが生まれないんだなって思ったというか。

加藤:時空を超えた、壮大な「副業」ですな。副業ってさ、「儲かる」とか「なんか役に立つ」とか、そういう領域になりがちじゃない。

角田:そう、全く意味のないことかもしれないんだけど、やっておくことが結果的に意義を持つようなことを「副業」って呼んでもいいと思うんだよね。

 もうひとつ、昭和新山だっけ、有珠山のところの。あれって確か戦中の昭和18年にむくむく盛り上がってできちゃった山なんでしょ?

加藤:あそこ元々私有地なんだよね。

角田:その過程をずっと記録してたのって確か郵便局の人なんだよ。

加藤:聞いたことあるな。

角田:郵便局の人が記録してたんだけど、当時は戦時中だから「そんなのやめろ」って話も来てたんだって。なおかつ、火山が噴火するってことで箝口令みたいなのも敷かれてたから、なんなら近寄ると罰せられるみたいなこともあったぐらいなんだって。ところが「山がこれだけ変化してるんだから、どう考えても記録しておいたほうがいい」って、その人は毎日記録してたんだって。

 そしたら、戦争終わってからその記録は「噴火活動でどうやって山ができるか」っていう初めての具体的な記録資料になったんだよね。でもそれって、はっきりと体制側からはNGとされていた行為で、その人は学者でもないのに「それでもやっておいたほうがいい」ってやっていたわけで、やっぱり素晴らしいなと思うんだ。

「役に立つか立たないか」じゃないんじゃないかな。「自分はこれをやっておいたほうがいいと思う」と直感で思うこととか、「なんかやりたいな」と思うことはやっておけっていう。金にならなかろうが役に立たなかろうが、関係ないと。

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『私たちの人生には、もうちょっと多くの選択肢があるんじゃないか?』ーーー加藤昌治

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角田 陽一郎/加藤 昌治

かくた よういちろう かとう まさはる

角田 陽一郎(かくた・よういちろう)

バラエティプロデューサー/文化資源学研究者 

千葉県出身。千葉県立千葉髙等学校、東京大学文学部西洋史学科卒業後、1994年にTBSテレビに入社。「さんまのスーパーからくりTV」「中居正広の金曜日のスマたちへ」「EXILE魂」「オトナの!」など主にバラエティ番組の企画制作をしながら、2009年ネット動画配信会社を設立(取締役 ~2013年)。2016年TBSを退社。映画『げんげ』監督、音楽フェスティバル開催、アプリ制作、舞台演出、「ACC CMフェスティバル」インタラクティブ部門審査員(2014、15年)、SBP高校生交流フェア審査員(2017年~)、その他多種多様なメディアビジネスをプロデュース。現在、東京大学大学院にて文化資源学を研究中。著書に『読書をプロデュース』『最速で身につく世界史』『最速で身につく日本史』『なぜ僕らはこんなにも働くのだろうか』『人生が変わるすごい地理』『運の技術』『出世のススメ』、小説『AP』他多数。週刊プレイボーイにて映画対談連載中、メルマガDIVERSE配信中。好きな音楽は、ムーンライダーズ、岡村靖幸、ガガガSP。好きな作家は、ホルヘ・ルイス・ボルヘス、司馬遼太郎。好きな画家は、サルバドール・ダリ。

                                                             

加藤 昌治(かとう・まさはる)

作家/広告会社勤務

大阪府出身。千葉県立千葉髙等学校卒。1994年大手広告会社入社。情報環境の改善を通じてクライアントのブランド価値を高めることをミッションとし、マーケティングとマネジメントの両面から課題解決を実現する情報戦略・企画の立案、実施を担当。著書に『考具』(CCCメディアハウス、2003年)、『発想法の使い方』(日経文庫、2015年)、『チームで考える「アイデア会議」考具応用編』(CCCメディアハウス、2017年)、『アイデアはどこからやってくるのか 考具基礎編』(CCCメディアハウス、2017年)、ナビゲーターを務めた『アイデア・バイブル』(ダイヤモンド社、2012年)がある。           

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  • 2021.09.02